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ある寒い日、私はCDプロデューサーの山本太郎氏、録音エンジニアの高埜秀一氏、調律の斉藤雅顕氏に初めてお会いしました。いずれも98年度、オーディオ誌のポップス・ジャズ部門最優秀録音賞を受賞したあの
「TO FAZIOLI 」 の制作スタッフです。格氏とも一見温厚そうで冗談好きだけれどもその目の輝き、情熱、勢いからも、強いポリシーの持ち主であり、今回の
CD も必ず素晴らしいものができあがるであろうとの予感がしました。
そしてピアノはベンゼルドルファー・インペリアルの特別に美しい外観と音を持つ記念制作モデルを使わせていただくことになりました。
私がウィーンから帰って以来何かとお気に書けて下さっている野ばらホールのオーナー、大前貴志夫氏所有のものです。ウィーンではいつもベンゼルドルファーを弾いていたのですが、その独特のパワー、芳醇さ、繊細さを出すため、ご好意に甘えてかなりの期間野ばらホールで練習させていただき、5月に最初のレコーディングを行いましたが自分自身納得のいかない作品があり、
さらに8月に録り直してもいただきました。(YPMレーベルの寛大さには深く感謝いたします)
生まれて初めてのレコーディングとスタジオ作業。リアルさを極限まで追求するというYPMレーベルの方針ゆえ、私の呼吸、ペダルの音、椅子のきしみまでマイクは音を拾っていき、慣れないことなので苦労の連続でしたが、スタッフに助けられ、またプロデューサー山本太郎氏の絶妙な音づくりにより、送られてきたCD-Rの音を初めて聴いたとき、ウィーンで聴いていた風の音や木々のさざめき、大地のぬくもりのようなものまで感じられ、涙があふれ出てきたほどでした。
またそれからも再度話し合い、綿密に音づくりをして頂き、非常に丁寧に仕上げられていきました。
2つの大きなソナタのあいだに宝石のように散りばめられた小品たち。
この CD 「ウィンナ・ピアノ」 が聴いた人の心にしみいる大切な一枚となることを願っております 。
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